花の女王の国
- Kazushige Maeda
- 7月24日
- 読了時間: 3分
ブルガリアは薔薇の国として世界的に有名です。

花の女王と呼ばれる薔薇で世界的に有名なブルガリアについてのお話です。
1. ブルガリアと薔薇の深い関係
ブルガリアは「バラの国」として世界的に知られています。
特に有名なのが、ブルガリア中部に位置する「バラの谷(Valley of Roses)」です。
ここで栽培されているダマスクローズ(Damask Rose)は、
世界最高品質のバラとして、香水や化粧品、
アロマ製品の原料となる「ローズオイル」の原産地として名を馳せています。
2. 歴史:数世紀にわたる薔薇の栽培
ブルガリアでのバラ栽培の起源は、オスマン帝国時代(17世紀)にまで遡ります。
トルコから持ち込まれたダマスクローズがこの地に根付き、
気候と土壌が栽培に非常に適していたため、産業として定着していきました。
18〜19世紀には、ブルガリアはすでに世界有数のローズオイル生産地となっており、
ヨーロッパ全土にその名を広げました。
現在もなお、ブルガリア産のローズオイルは「バラの金」と呼ばれ、
1kgが数百万円で取引されることもあります。
3. バラの谷 ― 栽培の中心地
ブルガリアの中央部に広がる「バラの谷(ローズ・バレー)」は、
特にカザンラク(Kazanlak)という町を中心に広がっています。
5月末から6月上旬にかけて、谷一面がバラの花で彩られ、
早朝には収穫のために多くの人が畑に出ます。
収穫はすべて手作業で行われ、花が最も香る早朝に摘み取られます。
摘み取った直後に蒸留しないと、香り成分がすぐに飛んでしまうため、
スピードと技術が求められます。
4. ローズオイルの製造工程
ブルガリアでは、伝統的な銅製の蒸留器を使ってバラの花びらを水蒸気蒸留します。
この方法で得られる「ローズオイル(精油)」と
「ローズウォーター(芳香蒸留水)」は、香水産業やアロマテラピー、
スキンケア製品に使用されます。
特にブルガリア産のローズオイルは、高い香気成分と安定した品質を持ち、
シャネル、ディオールなど世界的ブランドがこぞって使用しています。
5. バラの祭典 ― カザンラクのバラ祭り
ブルガリアでは、毎年6月初旬に「カザンラク・バラ祭り(Festival of Roses)」が
開催されます。これは、バラの収穫を祝う祭典で、国内外から多くの観光客が訪れます。
祭りでは、伝統衣装を着た人々が踊りを披露し、
「バラの女王」が選出されます。
さらに、バラ摘み体験やローズオイルの蒸留見学など、
香りに包まれた特別な時間を楽しむことができます。
6. ブルガリアのバラ産業の経済的意義
バラ産業は、ブルガリアの重要な輸出産業のひとつであり、
地域経済の支えにもなっています。
ローズオイルはEUや中東、アジア市場への輸出が盛んで、
農村地域の雇用創出にも貢献しています。
しかし一方で、近年は気候変動や人手不足、低価格競争などの課題も抱えています。
そのため、品質の維持と新たなブランド戦略が重要視されています。
7. 現代の動向と未来
現在、ブルガリアでは有機栽培によるローズオイルの生産が注目されています。
無農薬・無添加の製品は、健康志向の消費者に人気があり、
ブルガリア産の価値をさらに高めています。
また、観光と融合した「ローズ・ツーリズム」も発展しており、
香りをテーマにした宿泊体験、スパ、クラフト体験などが人気です。
これにより、単なる農産物ではなく、文化資産としてのバラの存在感が強まっています。
おわりに:香りが紡ぐブルガリアの誇り
ブルガリアのバラは、単なる花ではなく、人々の歴史・暮らし・誇りが詰まった存在です。その甘く優しい香りの裏には、長い伝統と精緻な技術、そして自然との深い調和があります。香水やコスメを手に取るとき、そこに込められたブルガリアの物語を感じてみると、より一層豊かな気持ちになれるかもしれません。
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